映画『シングル・イン・ソウル』は、「ひとりでいること」と「誰かといること」の狭間で揺れる大人のロマンスを、ソウルを舞台に描いた作品です。
今回は、「シングル・イン・ソウル」のネタバレなしのあらすじ、見どころ、キャスト・スタッフ情報、そしてこの映画が“なぜ観る価値がある”のかを丁寧に解説します。
Kコンテンツ歴約6年
母の影響で韓国にハマる。
勇気がなくて整形は無理。

『シングル・イン・ソウル』基本データ・制作情報

2023年11月29日に韓国公開、上映時間は103分。
- 監督:パク・ボムス
- 脚本:イ・ジミン
- 出演:イ・ドンウク、イム・スジョン(ほか、エソムら)
- 配給:ロッテ・エンターテインメント/Lotte Cultureworks
主演のイ・ドンウクさんとイム・スジョンさんは、共に韓国を代表する実力派俳優。
『トッケビ』『サーチ』『あなたの結婚式』などで知られる二人が、都会的で知的な大人の恋愛模様を演じました。
最初に言っておきますが、演技に関してはさすがの一言。
イ・ドンウクさんなんかは途中本人役なのでは?と思うくらいハマり役でしたね。
シングル・イン・ソウルのあらすじ(ネタバレなし)
舞台はソウル。
人気エッセイ講師でありインフルエンサーのヨンホ(イ・ドンウク)は、「ひとりでいるのが一番快適だ」と信じて疑わない自称“プロシングル”。
恋愛にも執着せず、効率的で整った一人暮らしを謳歌しています。

一方、出版社で編集長として働くヒョンジン(イム・スジョン)は、常に誰かと関わりながら仕事を進めるタイプ。
「人と関わることでこそ、言葉は磨かれる」と信じる彼女にとって、ヨンホの生き方は理解しがたいものでした。

そんな二人が、「シングルライフ」をテーマにしたエッセイ出版プロジェクトで出会います。
ですが、初回打合せから価値観は真っ向から衝突。
「“ひとりでも大丈夫”」と「“ひとりが最高”」は似て非なるもの——。
執筆と編集の往復の中で、ヨンホは言葉のニュアンスに徹底してこだわり、ヒョンジンは読者に届く“物語”を求める。ソウルのカフェ、書店、夜景の見える部屋……。執筆が進むほど、二人の過去の傷や“未完の感情”もいつのまにか原稿に滲み出していく。
やがて、連載の鍵を握る人物の存在が明らかになったとき、二人は「書くこと」「読むこと」、そして「ひとりでいること/誰かといること」の意味をもう一度問い直す——。
映画の見どころ紹介
1) “言葉”をめぐるロマンス
本作のロマンスは、告白や出来事よりも「語の選択」「文脈の組み立て」に熱量が宿っているタイプ。
要するに、告白や派手な出来事ではなく、言葉の選び方・編集と執筆の往復を通じて距離が縮まっていく…という様子を描いている作品です。
著者と編集者という関係性が、仕事の論理と個の感情を往復させ、セリフの言い回し・言葉尻の違いから、二人の距離感を見ることができる、見ていて心地よい作品。
書く/直す——この反復が、恋の往復書簡のように響くのが知的で気持ち良い。
2) ソウルという都市の“居心地”
映画のタイトル通り、物語の背景は“ソウル”という大都市。
カフェ、書店、編集室、高層マンションなど、現代のソウルを象徴する空間が次々に登場します。
映像はとてもスタイリッシュで、カメラワークも素晴らしく、都会での「ひとり時間」の美しさが丁寧に描かれています。
夜景に囲まれた窓辺、静かな書店、朝の散歩道——そのすべてが「誰かといる時間」と対照的な風景を演出しています。
美術・音楽の完成度も高く、都市生活者にとって“共感の塊”のような映像世界です。
と、ここまでそれっぽく書きましたが、あの雰囲気は言葉で表すにはあまりにも難しいので、ぜひ観て、感じていただきたい。それくらいの美しさがありました。
3) イ・ドンウク×イム・スジョンの演技力
イ・ドンウクは自意識の強さと繊細さを併せ持つ“こじらせ系アダルト”を、イム・スジョンは理性的な編集者の内側で膨らむ感情の温度差を、コミカルさを交えて表現してくれています。
批評では“軽やかすぎる”との声もありましたが、個人的には二人の相性がいいので気になりませんでした。
好みは分かれるかもしれませんが、個人的には2人の演技力あっての作品だと思っています。
4)韓国社会の「ソロ文化」をリアルに描写
韓国では近年、「혼족(ホンジョク/ひとり族)」という言葉が広まり、ひとりで食事・旅行・趣味を楽しむライフスタイルが社会的に定着しています。
本作はまさにその“ソロ文化”のリアルを反映した作品と言えるでしょう。
ヨンホは、「ひとりで完結できる人間こそ成熟している」と信じる世代の象徴。
一方ヒョンジンは、他者と協働する中で自分を確立してきた「共感型」の人物。
この対立構造が、現代韓国の価値観の変化を表しているように思うのです。
監督のパク・ボムス氏はインタビューでこう語っています。
「この映画は恋愛映画ではあるが、同時に“ひとりで生きる力”についての物語でもある。」
作品のメッセージは「ひとりも悪くない。でも、心を開けばもっと豊かになる」。
派手な展開はないものの、観終わった後に自分自身の“孤独との付き合い方”を考えさせられます。
社会背景を理解して観ると、作品がより深く響くでしょう。
こんな人におすすめ
- 一人の時間を楽しみつつも、時々「誰かと共有したい」と感じる人
- 恋愛映画が苦手だけど、“関係の変化”には興味がある人
- 韓国のリアルな都会の雰囲気が好きな人
- 静かなトーンで心情を描く作品を求めている人
少しだけ踏み込んで内容紹介
- 本作が提示する「ひとりでいること」と「誰かといること」の対立構造は、韓国社会における“ソロカルチャー”の高まりと直結しています。
- また、言葉・編集・執筆という“創作プロセス”を通じて恋愛が描かれている点で、一般的なラブコメとは一線を画しています。
- 批評的には「ラブコメとしては軽め」「物語展開に物足りなさ」も指摘されており(例:韓国The Korea Herald) コリアヘラルド。そのため“派手さ”を期待せず、静かな味わいを楽しむことが前提です。
海外・国内での評価
韓国の映画専門サイト「Naver Movie」では平均スコア8.3点と高評価。
観客レビューでは「静かだけど心に残る」「セリフの一つ一つが美しい」との声が多く見られます。
一方で、「テンポがゆっくり」「派手さがない」という意見もあり、好みが分かれる作品でもあります。
とは言え、日本国内のSNSでは「イ・ドンウクとイム・スジョンの演技がリアルすぎて泣いた」「映像が美しい」といった感想が多く投稿されています。
特にイ・ドンウクの代表作の一つとして、これからも長く愛される作品になったのでは、と思います。
まとめ
『Single in Seoul』は、恋の劇的なイベントよりも、“言葉の選び方”で心の距離が縮まる過程を愛でる作品。
都会の孤独を特別視せず、ソロ活と親密さの間で揺れ動く微細な感情を、書く/直すという創作の運動に重ねて描きます。
派手さはありませんが、文章と編集のディテールが好きな映画好きほどニヤリとできる、端正な都会派ロマンスです。
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