「また卒業……?」
「大切なお知らせ」というサムネイル。
嫌な予感がして、恐る恐るクリックしたら…やっぱり卒業報告だった。
こんな経験、にじさんじのファンなら一度や二度じゃないはずです。
2022年ごろから「卒業ラッシュ」と言われるほど、にじさんじでは所属ライバーの卒業・引退が目立つようになりました。
2024年だけでも8名がグループを離れ、2025年に入っても瀬戸美夜子、バン・ハダ、虎姫コトカ、ファルガー・オーヴィド、奈羅花、小野町春香と、次々に卒業が発表されています。
累計ではなんと70名以上のライバーがにじさんじを去っているんです。
正直、ファンとしてはしんどいですよね。
というわけで、今回はにじさんじの卒業が多い理由について考察していくのでお話させてください。
・Vtuberリスナー歴5年
・にじさんじメインで
年間1,500時間以上視聴
・えるさんメンシ3年継続中
・ホロライブ、ぶいすぽ
も毎日チェック
・ 最近は個人勢からの
逸材探しが趣味
・X(@saku_yuna_)でも考察を発信中

にじさんじの卒業が多い最大の理由
まず最初に押さえておきたいのは、にじさんじの所属ライバー数が業界で圧倒的に多いという事実です。
にじさんじには国内外合わせて170名以上のライバーが在籍しています。

海外グループを含めると200名を超えていた時期もありました。
一方、よく比較されるホロライブは海外勢を含めて90名程度。
つまり、にじさんじはホロライブの約2倍のライバーを抱えているわけです。
Yahoo!知恵袋に興味深い計算がありました。
日本国内に限定し、契約解除を除いた卒業者の割合を比較すると、にじさんじは165人中27人で約16.4%、ホロライブは50人中8人で約16%。
実は卒業率にはほとんど差がないんです。
これ、ちょっと意外じゃないですか?
たとえば10人の事務所で1人辞めるのと、200人の事務所で20人辞めるのは、率としては同じ10%です。
でも「20人辞めた」というインパクトは、SNSのタイムラインを見ていると圧倒的に大きく感じますよね。
にじさんじの卒業が「多い」と感じるのは、この母数のマジックが大きな原因だと個人的には思っています。
ちなみに、日本の娯楽・サービス業の平均離職率は20%弱と言われていますから、にじさんじの卒業率は一般企業と比べても特別高いわけではありません。
ただ、「推し」という感情的なつながりがあるぶん、数字以上にダメージが大きいですよね…
「やりたいことができない」:方向性の違いという根深い問題
母数の問題だけでは説明しきれない部分もあります。卒業理由として最も多く聞かれるのが、「事務所との方向性の違い」です。
黛灰:「事務所の方針に耐えられる自信がない」
この言葉の重みを最も象徴しているのが、2022年7月に卒業した黛灰(まゆずみ かい)でしょう。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 愛称 | まゆゆ、まゆくん |
| 活動期間 | 2019年7月24日〜2022年7月28日 |
| 卒業理由 | 事務所との活動方針の違い |
| 特徴 | 「ハッカー」設定、人狼ゲームの名手 |
黛灰は卒業配信で「事務所の方針に耐えられる自信がない」と語りました。
具体的な内容は明かされませんでしたが、ファンの間では「自作ゲームの無料配布を運営に却下された」というエピソードが知られています。
技術力があり、クリエイティブなことに挑戦したいタイプの彼にとって、企業の枠組みは窮屈だったのかもしれません。
ちなみに、卒業発表時に「まゆゆ卒業」がトレンド入りして、某アイドルグループのファンと混同されるハプニングもありました。
本人も「まゆゆ卒業って聞くとあの某アイドルの方しか思い浮かばないんだけど」とコメントしていて、最後までユーモアを忘れない人だなと思いましたね。

勇気ちひろ:音楽ライブという夢
2024年1月末に卒業した勇気ちひろは、にじさんじ1期生として初の卒業者となりました。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 愛称 | ちーちゃん |
| 活動期間 | 2018年2月8日〜2024年1月31日 |
| 卒業理由 | やりたいことをやるため |
| 特徴 | FPS配信の実力者、1期生初の卒業 |
表向きの理由は「やりたいことをやるため」でしたが、その後の動きから、にじさんじでは音楽ライブの開催が難しかったことが大きな理由だったと考えられています。
実は、勇気ちひろには鈴谷アキとの音楽ユニット「UnisonChouette」で音楽ライブをやりたいという夢がありました。
しかし、にじさんじの音楽ライブは年間わずか4〜5組しか開催できないほど狭き門。
登録者65万人、女性ライバーの中でもトップクラスのスパチャ収益を誇った実力者でさえ、その機会を得ることは難しかったのでしょう。
卒業後、わずか数日で転生先として活動を開始し、2ヶ月ほどで音楽ライブの開催目処が立ったという事実が、この理由をほぼ裏付けています。
個人的には、「にじさんじでは力不足だった」と語る彼女の言葉が切なかったですね。
65万人もファンがいて「力不足」って、それは本人の力の問題じゃなくて、構造の問題だと思うんですよ。

ファルガー・オーヴィド——「目標を達成できた」
2025年5月に卒業したNIJISANJI ENのファルガー・オーヴィドは、知的なトークとサブカルチャーへの深い造詣で人気を集めたライバーでした。
卒業理由として「デビュー時に掲げた目標を達成できた」ことと「自分のスタイルと事務所の方向性の違い」を挙げています。
企業という枠組みが、彼の自由奔放な性格やダークなユーモア、ニッチな興味に合わないと感じるようになったそうです。
配信自体は精神的な支えだったものの、「にじさんじ」という看板の下では表現しきれないものがあったということでしょう。
にじさんじとホロライブ——運営方針の違いが生む差
にじさんじの卒業を語るうえで避けて通れないのが、ホロライブとの比較でしょう。
「芸人事務所」vs「アイドル事務所」
ホロライブを運営するカバー社は少数精鋭のアイドルプロダクション方式で、タレントごとにマネージャーをつけ、歌唱やダンスのトレーニング、オリジナル楽曲の提供まで手厚くサポートしています。
一方、にじさんじを運営するANYCOLOR社はタレント各自の実力に任せる芸人事務所方式で、成果を出した人をサポートするスタイルです。
この違いは数字にも表れていて、ホロライブでは登録者30万人以下のタレントが0名なのに対し、にじさんじでは88名もいるんです。
にじさんじの方が「多様性がある」と言えば聞こえはいいですが、裏を返せばサポートが行き届かないライバーが多いということでもあります。
人員不足という現実
にじさんじはライバーの人数が業界最多ですが、同業他社に比べて裏方の社員数が少ないという指摘もあります。
特に海外部門はトラブルも多く、マネジメントの人員が足りていない印象を受ける、という声はファンコミュニティでもよく聞かれます。
200人近いライバーを抱えながら、一人ひとりに十分なケアやサポートを提供するのは、そもそも難しいですよね。
結果として、「やりたいことがあるのに、運営が動いてくれない」「企画を立てたいのに、機会が回ってこない」という不満が溜まりやすい環境になってしまうわけです。
収益の取り分問題
これは非常にセンシティブな話題ですが、避けては通れません。
ANYCOLOR社は公式に、YouTubeなどのプラットフォームから受け取った収益の50%をライバーに報酬として支払っていると明言しています。
つまり残り50%は運営側の取り分ということになります。
Yahoo!知恵袋では「収益の50%を持っていかれるのと釣り合うメリットがないと、所属し続けるのは難しい」という率直な意見もありました。
特に英語圏のライバーはビジネスライクな傾向が強く、所属するメリットを提示できなければあっさり辞めてしまうケースもあるようです。
IR資料の分析では、ANYCOLORは全体として演者に約51億円の報酬を渡していると推定されていますが、営業利益率が38%という高水準であることから、「運営が演者の2倍の付加価値を創っているという解釈はどうも腑に落ちない」という指摘もあります。
VTuberの魅力の源泉は演者そのものなのに、利益配分がそれを反映していないのでは、という疑問は、ファンだけでなく業界関係者の間でも議論されています。
もちろん、運営側にもIPの管理、技術基盤の提供、企業案件の獲得、イベント運営など多大なコストがかかっているので、一概に「搾取だ」とは言えません。
ただ、この構造が卒業の一因になっている可能性は否定できないでしょう。
心が折れる——誹謗中傷・ストーカー被害という闇
方向性の違いや収益構造以外に、もうひとつ深刻な問題があります。それが精神的な負担です。
鈴原るる——果たし状とストーカー被害
この話をするたびに胸が痛むのですが、2021年6月に卒業(その後復帰)した鈴原るるのケースは、VTuber業界の闇を象徴する出来事でした。

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 愛称 | るるちゃん |
| 活動期間 | 2019年5月1日〜2021年6月30日 |
| 卒業理由 | 脅迫・ストーカー被害 |
| 特徴 | 高難易度ゲームクリアのタフさ |
| その後 | 2025年12月に約4年半ぶりに復帰 |
鈴原るるは卒業配信で「果たし状なるものを頂きまして」と、直接的な表現を避けながらもストーカー被害を受けていたことを明かしました。
ただ、この話には嬉しい続きがあります。
2025年12月23日、鈴原るるさんは約4年半ぶりににじさんじでの活動を再開したのです。
復帰配信では、問題が完全に解決したことをファンに報告しました。
当時は支援体制が十分ではなかったものの、運営や関係者の協力を受けながら、ようやく安心して活動できる状況が整ったということです。

この復帰は本当に嬉しいニュースでしたし、同時に、にじさんじの支援体制が改善されつつあることの証拠でもあると思います。
奈羅花:介護うつと活動の両立
2025年11月に卒業した奈羅花は、卒業発表の約1ヶ月前に「躁うつ病と診断され、通院している」ことをライブ配信で明かしていました。
うつ状態になったきっかけとして、介護によるストレス(いわゆる介護うつ)があったとされています。
VTuber活動は一見華やかですが、毎日の配信準備、ファンとの交流、SNSの管理、企画の立案——その負担は計り知れません。
そこにプライベートの問題が重なれば、心身ともに限界に達してしまうのは当然のことです。

海外グループ特有の問題:にじさんじENとKR・IDの苦悩
卒業が特に目立つのが、海外グループです。
にじさんじKR(韓国)やID(インドネシア)が国内に統合された2022年前後には、多くの海外ライバーが卒業しています。
セレン龍月の契約解除騒動
2024年に起きたNIJISANJI ENのセレン龍月の契約解除は、海外のファンコミュニティに大きな衝撃を与えました。
この騒動をきっかけに、にじさんじENは海外リスナーから激しい批判を受け、関係のないライバーまで巻き添えで叩かれたり、同時接続数が大きく落ち込んだりする事態に。
この環境の悪化が、その後の卒業ラッシュにも影響を与えたと見る向きは多いです。
虎姫コトカさんが「会社との方向性の違い」を卒業理由に挙げたのも、こうした背景と無関係ではないでしょう。
文化の壁とサポート体制の課題
英語圏のライバーにとって、日本企業であるANYCOLORのやり方は時に不可解に映ることもあるようです。
「独立した方が手っ取り早く稼げる」「収益の50%を払ってまで所属するメリットがない」
そう判断されてしまうと、卒業は避けられません。
特にEN部門は「育てる」というよりも、「元々数字を持っている人を一時的ににじさんじENとしてやらないか?」というフリーランス的な勧誘スタイルだったという指摘もあり、帰属意識が育ちにくい構造だったとも言えます。
卒業したライバーのその後——「卒業=終わり」ではない
ここまでちょっと重い話が続きましたが、最後に希望のある話をしましょう。
実は、にじさんじを卒業したライバーの多くが、その後も何らかの形で活動を続けています。
2023年から2025年にかけては、過半数以上が別名義や個人勢として再デビューしています。

勇気ちひろは卒業からわずか約1週間で個人として活動を再開し、自ら事務所を設立。
念願だった音楽ライブの4都市ツアーを成功させました。
4年半の沈黙を経て、にじさんじに復帰した鈴原るるという異例のケースも出てきました。
「卒業」という言葉は、VTuber業界では「辞める」「脱退」よりも温かみのある表現として定着しています。
実際、卒業はキャリアの終わりではなく、次のステージへの移行であることが多いんですよね。
推しが卒業するのはたしかに寂しいし、喪失感は大きい。でも、「あの人は今も元気にやってるんだな」と知れるだけで、少し救われる気持ちになりませんか?
まとめ:にじさんじの卒業ラッシュとどう向き合うか
ここまで色々な角度から分析してきましたが、にじさんじの卒業が多い理由をまとめると、以下のようになります。
構造的な要因: 所属ライバー数が業界最大級であるため、卒業の絶対数が多くなる。卒業率自体はホロライブとほぼ同等で、一般企業の離職率と比べても特別高くはない。
運営方針の要因: 「芸人事務所型」の運営で個人の裁量に委ねる部分が大きいが、裏を返せばサポートが手薄になりやすい。音楽ライブなどの機会が限られ、やりたいことを実現できないライバーが出てくる。
収益構造の要因: プラットフォーム収益の50%が運営の取り分であり、独立した方がメリットが大きいと判断するライバーがいる。
環境的な要因: 誹謗中傷やストーカー被害、配信活動の精神的負担、海外グループ特有の文化摩擦など、心身を蝕む問題が存在する。
個人的に思うのは、これらの要因はどれかひとつが決定的というわけではなく、複合的に絡み合っているということです。
そして何より、ライバー一人ひとりが自分の人生について真剣に考えた結果として卒業を選んでいるということを、ファンとして尊重したいなと思います。
「いつかは終わるかもしれない」
そう思うと不安になるかもしれません。でも、だからこそ今この瞬間の配信を全力で楽しむことが、ファンとしてできる最高の応援なのかもしれませんね。
推しが複数いてもいい。箱推しでもいい。一人に全力を注いでもいい。推し活のスタイルは自由です。
ただ、どんな形であれ、「あの日あの配信を観ていて良かった」と思える瞬間を、一つでも多く積み重ねていけたら、それが一番幸せなことだと、わたしは思っています。


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